[読書メモ]『パイプ随筆』

  • 書籍
  • 2018年07月15日(日) 07:47

p9
私、個人の経験を申し上げれば、一本のみを愛用していると、そのパイプは、いつも奇麗である。/沢山パイプを持っていると、どうしても手入れがおろそかになる。/私の奥さんは、奇麗である。

p10
人が年をとって優雅になれないということは悲しむべきことであるけれど、これが日本のサラリーマンの現実であろう。

p14
市電が都電になり、今、それも姿を消し、ただ道路は自動車の洪水である。

p17
「パイプを買うときは、迷ったら駄目。これと思ったら目をつむって買ってしまう」

p22
早川さんは会話より、文章の方が素敵だった。

p33
パイプというのは、どうやら品性と落着きを要求するものらしい。

p35
ブライアーパイプ誕生の地サン・クロードはスイスに近くフランスの中では寒冷地、イギリスもデンマークも寒い国である。カリブ海のような陽光の下ではパイプは適さないのであろう。

p43
マッチの火をつけた。二、三服吸いつけているうちに、私は夢を見ているようだった。

p50
メアシャウム(海泡石)のパイプは “パイプの女王” と呼ばれる。

p91
好きな本を読む時など、パイプは又うれしいもんだ。シガレットはあわただしくて、落ち付きがない。ゆつくりとじつくりと好きな本を読む時などは、パイプが一番しつくりする。物を書くようになつてから、一層パイプは好きな友となつた。考えた行きつまつた時、さてペンを置いてパイプを吸えば、いい考えが起つてくる。心に余裕を与えるからだ。

p118
パイプに関するかぎり、万事ゆったりといきたいものだ。

p120
しかしまあ、素人心理学はこのくらいにしておこう。

p178
ホームズ、メグレ、マーロウ・・・・・・と探偵にパイプ党が多いのはなぜだろうか、謎ときとパイプ党はどこでつながっているのか、などと考えていて、ひょいと、そういえば、パイプはクウェスション・マーク〔?〕の形にそっくりだと思いあたった。パイプは疑問符のかっこうにつくられているのだ。

pp178-179
英語で put that in your pipe and smoke it(それをお前のパイプにつめて吸ってみろ)と言えば、とっくりと考えてごらんという意味である。パイプを吸うことは、謎をじっと考えつづけることに関係があるらしい。

p184
イギリスのパイプの象徴がシャーロック・ホームズであれば、フランスを代表するパイプを銜(くわ)えたヒーローはシムノン氏が想像したジュール・メグレ警部になるだろう。

p185
ホームズの部屋には、パイプ架(piperack)があったこと(「青い紅玉」「空家の冒険」)は、はっきりしているが、このパイプ架に、どんなパイプがおいてあったかは、よくわからない。

p201
大学生で恐れを知らない編者は、長沼弘毅に直接聞いてみようと考えた。

p202
「氏は次官時代、役所の仕事は午前中しかしなかったという。午後は次官室を立ち入り禁止として、労働法の研究に励む。そして、夜は宴会を一切断ってホームズの研究に捧げていたそうである。これは、古き良き時代の大蔵省の話である」

p218
こんな言葉を書き並べると、なんだか恋でもしてしまったかのようである。いや、現実に私は、そのパイプに恋をしてしまったのかもしれない。

p229
一時期、アメリカなどでもてはやされたグロテスクなファンシー・シェイプはパイプではない

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