[読書メモ]『ユリイカ 総特集 シャーロック・ホームズ』

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  • 2018年10月12日(金) 09:56

p18
__では役づくりという点で、シャーロックを演じる場合、役につぎ込む量が違う、ということはありますか?
B そうだね。確かにシャーロックになるのはハードワークだ。でもそれが他の役より大変だとは言えない。食事に気を付けたり、瞑想してみたり、シリーズが始まる前に、再度原作を読み返したり。詩を暗記しようとしたり、車のナンバープレートを覚えようとしたり。そうやって記憶力を鋭くしようと訓練する。

p24
演技について話すのはジョークを説明するようなもんで、難しいものだよ。語ることでなにかしらが失われると信じているんだ。

p26
続篇がオリジナルを上回った例ってないでしょう。

p27
映画のポスターの宣伝文句に「そしてすべてが起こる、もう一回」なんて書いても興味は持ってもらえませんよね。

p47
「ホームズの思考を視覚化する」手法は、逆に映像化作品でしかできないことなのである。

p57
求められているのは「答え」ではなく「謎」の提示であり、それを視聴者自身がひとりのシャーロック・ホームズとなって解釈することのほうなのだ(画面にぽんぽんとテンポ良く表示されるテロップが、シャーロックの思考をわたしたちに追体験させてくれたように)。

p57
ファン・フィクション(二次創作)

p57
そもそも「シャーロック・ホームズ」の舞台をヴィクトリア朝から現代のロンドンに持ってくるというアイデア自体が多分に二次創作的である[。]

p61
ファンカルチャー

p70
既視感が伴うのはそれだけ原作のホームズが推理小説の雛形として、過去 100 年の間に多くの大衆娯楽作品に影響を与えてきたからなのだろう。

p70
派生作品(デリバティブ)

p71
[画面に字幕として表示することで] スマフォに送られたメッセージを表示する場合、わざわざスマフォ画面を映す必要がなくなった。

p72
録音や撮影もできるスマフォは、ちょっとしたスパイガジェットであり、このコンピュータが普及した現代では、誰もが探偵やスパイになり得ることを含意する。

p72
しばしば「見てはいるが、観察していない」とジョンをたしなめるように、シャーロックの探偵術の要(かなめ)は「観察」にある。

p72
21 世紀の今日、「科学の客観性」は必ずしも無前提に容認されるものではないが、ドイルがホームズの物語を書きはじめた 19 世紀末はむしろ科学の力を社会全体が謳歌した時代だった。

p77
いうまでもなくスパイ小説はイギリスのもう一つのお家芸だ。

p78
結婚式でのベストマンスピーチ(友人代表スピーチ)

p94
理想の恋愛は、脈を取られること!! 相手がシャーロック・ホームズだったら、死んでもいい!!

p96
カンバービッチ(カンバーベイブ)

p108
デジタル時代に生きる私たちの脳という屋根裏部屋はもう、ホームズやワトスンのころのように窮屈ではない。

pp129-130
これらの作品におけるワトソンは、天才的な知性と浮き世離れした世界観のためにともすれば一般社会から乖離してしまいそうになりがちなホームズを、「こちらの世界」につなぎ止めておくアンカーの役割を果たしている、ホームズにとってはなくてはならない友人なのだ。

p139
格闘を事前に頭の中でシミュレーションしてから実行する「ホームズ・ビジョン」

p146
「ぶな屋敷」でも「美しき自転車乗り」でも、依頼人の女性の名前がヴァイオレットであるのは、コナン・ドイルが女性の登場人物名を考えるときに、ヴァイオレットという名を思いつきやすかったということかもしれないが、普段は女性にそっけない態度のホームズがヴァイオレットという名前には妙に優しい態度をとったということの現れではないかと想像する余地がある。

p157
そこがやっぱり、長く読み継がれるひとつの大きな理由でしょうね。現代のテンポの速いミステリー小説とはひと味違う。じっくり読めるし、何度もくり返し読める。

p159
ドイルってひとが理性だけの人間であれば、あれほど面白い小説は出来なかったでしょうね。

p160
貧しい家庭教師の女のひとの依頼に対しては、「かかった費用だけのちほど」って。本当はタダでもいいと思ってるぐらいなんだけど、それでは失礼だから。

p164
そのひとそのひとで感じることが違うから、私が名言と思っても他のひとの名言になるかどうか。

p170
世ではこれに「不倫」という言葉を使うこともあるが、この言葉には価値判断が感じられるので[…]「婚外恋愛」という表現をつかっている。

p171
「研究に終わりはない」(「赤い輪」より)

p173
注意深く読むと、ワトソンは信頼できない語り手として繰り返し印象づけられていることがわかる。

p174
奇妙なことに、ワトソンは手紙を引用する際に「一枚足りなくなっているのは残念だが」という一言をさりげなく挿入している。ワトソンはさして気に留めずに話を進めるが、読者に差し出されるのは、何らかのパーツが欠落した不完全な情報であるということになる。日記の引用についてもわざわざ「抜粋」と書かれており、ワトソンによって除外された情報が存在することをうかがわせる。

p180
アブダクションとは、一つの事実を観察し、それを理解するために「直感や閃きのような飛躍によって」仮説を打ち立て、その仮説によって事実が結論づけられる論理的操作である[。]

p186
何作目かの短篇を読んだあと、余韻を味わうため、いつもの習慣で栞(しおり)を挟み、いったん本を閉じた。そして、自然と「ホームズ、すごいな」とつぶやいた。ホームズを読んだことのある人なら、こういったことは、誰でも一度はつぶやいたことがあるだろう。

p205
ハイ・ティーとは、肉料理を食べないアフタヌーン・ティーのことを「ロー・ティー(low は「栄養価が低い」の意)」と呼んだのに対して、肉料理も出ることからハイ(栄養価が高い)・ティーと言われるのですが、早めの夕食も兼ねています。

pp205-206
「彼の食べっぷりを見ただけで、仕事がはかどっているのがはっきりわかる。頭を悩ましているときの彼は、食事など見向きもせず、ただやせてとがった顔をますますやつれさせ、夜となく昼となくひたすら頭脳労働に集中するばかりだ」

p209
ホームズは頭脳明晰で観察力と分析力は抜群ですが、「探偵術についての賛辞を聞くと、美人だと褒められた女性」のように顔を赤らめるほど敏感に反応するし、今回のように事件解決の説明をするときに、依頼人へのサプライズをして楽しむ様子をみると、真実を追究する時や恋愛に対する冷たさとは別の一面が判ります。

p223
スコットランド・ヤードが指紋を正式に導入したのが 1901 年

p224
指紋には推理の余地がほとんどないからである。指紋が犯人を特定できるのは、すでに登録してある指紋と比較して、その同一性が確認できたときである。犯人探しは官僚的な記録の照合作業に還元され、もはやそこに推理の出る幕はない。

p233
私はよくひとから、探偵小説を勉強したいが、何を読んだらいいかと聞かれることがある。そんなとき、私は即座に、シャーロック・ホームズを全部読みなさい。それも一度だけでなく、何度も何度も繰りかえして読んでごらんなさい。そうすれば、おのずから探偵小説のコツを会得することが出来るだろうと答えることにしている。

p235
ホームズの個人全訳は[…]延原謙が最初である。

p258
植民地が多かったので、当時の英国では国際結婚が珍しくなく、言葉や風習が異なる夫婦の間が冷たくなる例もめずらしくなかっただろう。

p261
「ホームズ物語」ではお馴染みのプロットのひとつ、「年下の男」との恋愛がからんでいる。

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