[読了レビュー]『ストランド版 続シャーロック・ホームズの冒険』

『ストランド版 続シャーロック・ホームズの冒険』が届き、そのデザインについてのレビューを書きました。

[レビュー]『ストランド版 続シャーロック・ホームズの冒険』 – Sherlock Holmes Topia
https://sh-topia.cf/2018/10/16/review-strand-zoku-holmes-boken/

次に実際に本を読んでみたのでその感想を書きます。

まず普通に紙の本や電子書籍で読む限り、今まで縦書きでホームズ物語を読んできたので、今回横書きで初めて読んだのが「変な感じ」がして面白かったです。

大きめの本なので、文庫本などと比べるとページをめくる回数が少なくなります。なので、あっという間に読めてしまう感じがありました。コナン・ドイルはスピーディーな執筆スタイルで、長編よりも短編に魅力があると言う人がいますが、こういう風にスピーディーに読み切るのがホームズ物語を最大限に楽しむ方法なのかもしれません。

木口(こぐち)木版画を高精細に再現した挿絵も、これまで見えなかったものが見えた感じがして新鮮でした。挿絵として私は初めて見るものもありました。p139、155、156 あたりの挿絵です。

私はセルフパブリッシングで本を出しているので、InDesign を使った本の編集をします。その観点からすると、本書は編集に関してはちょっと「甘い」部分があると思いました。本文中の名前はすべて「名・姓」と中黒(・)で区切ってあるものの、シャーロック・ホームズだけは「シャーロックホームズ」と中黒がなしです。と思いきや、本のタイトルや最終ページの次回予告では「シャーロック・ホームズ」と中黒があって不統一。挿絵下の説明文と、本文との間隔が広いところと狭いところがあるのも気になりました。また、印刷の問題ですが2つのダッシュ(—)が連結されず、わずかに離れている部分もありました。細かいところですが、編集を本気でやるとそういう細かいことこそ気になるのです(ホームズも細部が大事だと言ってましたね!)。

ホームズ物語は過去にすでに読んでいますが、今回新しく気付いた内容に関する感想を少しだけ書きます。

「グロリア・スコット号の冒険」は他の作品と比べてホームズの推理が少ないのが変則的で、逆に新鮮でした。ホームズ物語では助けてやった人に脅迫される話が多い気がします。徹底して口封じをやれるほど冷酷になれないところが、良心が残っている感じが好きです。本当は悪い人じゃないから、過去に多少悪いことをしても再スタートできるという希望があります。

「曲がった男の冒険」はベイカー街非正規部隊が登場する3作品のうちの1つです。インパクトがあるのに登場回数が少ないキャラはホームズ作品にいます。マイクロフトもそうですし、アイリーン・アドラーだってそうです。

「患者付き医院の冒険」はボーイがグルなわりに役立たずだなあと思いました。患者に化けてやってきた2人組は、内通者のボーイがいるわりに、レッシントンと行き違いになっています。そもそも2人組は何のために病院へ来たのでしょう。レッシントンを始末するなら夜に来るだけでいいはず・・・。それと逃走した犯人の船が消えるのは、ホームズ物語ではよくある展開ですね。

「ギリシャ語通訳の冒険」は普通にこわい話だと思いました。無気味な連中に拉致されるなんて、考えただけでゾッとします。

「海軍条約文書の冒険」では冒頭で、ペルシャスリッパの中に入ったタバコ(パイプに詰めるパイプタバコの葉)をホームズがワトソンに勧めています。汚いでしょ! 家族だけど血が繋がっていない「義理の○○」が悪役になるのが、これまたホームズ物語には多くあります。やはりこれもコナン・ドイルの家庭環境が反映されているのでしょうか。

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