Carleton Hobbs 版ラジオドラマの Series 5 を聴き終えました
- レビュー
- 2021年07月20日(火) 10:54
BBC Radio 4 Extra で Carleton Hobbs 版のホームズのラジオドラマが公開中です。結構長期に渡って公開されていますね。
BBC Radio 4 Extra – Sherlock Holmes – Available now
https://www.bbc.co.uk/programmes/b01j9gzs/episodes/player
Series 4 までの感想はこちら。
https://sh-topia.cf/2021/05/08/bbc-radio-carleton-hobbs-series1/
https://sh-topia.cf/2021/06/01/bbc-radio-carleton-hobbs-series2/
https://sh-topia.cf/2021/06/26/bbc-radio-carleton-hobbs-series3/
https://sh-topia.cf/2021/07/08/bbc-radio-carleton-hobbs-series4/
そして、Series 5 を聴き終えました。2倍速で 10 回聴いています。
収録作品:
1 – The Solitary Cyclist
2 – The Bruce-Partington Plans
3 – The Three Garridebs
4 – The Norwood Builder
5 – The Sussex Vampire
6 – The Red-Headed League
7 – The Three Gables
8 – The Retired Colourman
2作目の 16:00 ごろ音声の乱れがあります。他の Series でも音声が変になっているところは時々あります。BBC の技術ならこんなものは簡単に直せるはずなのに・・・。
気付いたことをメモしておきます(タイトルの日本語訳は創元推理文庫と合わせています)。
‘The Solitary Cyclist’(ひとりきりの自転車乗り)では、ヴァイオレット嬢がなかなかチャーミングな喋り方で登場します。女性に目がないワトスンも charming と呼んでいました。
ヴァイオレット嬢が「カラザーズさんは、男やもめ・・・なんですか?」と聞いているところは、「家庭教師として雇われるということは、私、狙われてるのかしら」ということでしょうか。
「ひとりきりの自転車乗り」はグラナダ版テレビドラマだと後味の悪い事件でしたが、今回のラジオドラマだとずいぶん明るいエンディングです。カラザーズ氏もいい人になっています。グラナダ版を中学生の頃観てホームズ好きとなった私は、良くも悪くもグラナダ版でイメージができあがっているので、どうも違和感がありました。
‘The Bruce-Partington Plans’(ブルース=パーティントン設計書)では、鉄道のポイントやカーブで興奮しているホームズが、鉄道オタクっぽくはしゃいでいるところが楽しいです。
‘The Norwood Builder’(ノーウッドの建築業者)で見つかった指紋のことを「fingerprint ではなく thumbprint だ」と言うシーンがあります。ここで辞書を調べて気付きましたが、英語の指というのは、親指が thumb で親指以外の4本の指が finger なんですね。中学校で習うような簡単な英単語なのに盲点でした。ちなみに、足の指は toe で5本すべてを指します。関連する英単語として、親指の爪が thumbnail、親指以外の爪が fingernail、足の爪は toenail となるわけです。
‘The Three Gables’(〈三破風館〉)で、ワトスンが a social butterfly と言っていますが、原作を調べると a society butterfly となっていました。a social butterfly とは「あちこちに顔を出す社交家」という意味だと今回辞書で調べて初めて知りました。おそらく a society butterfly よりも一般的な a social butterfly がラジオドラマでは使われたようです(a society butterfly は調べた限り辞書には載っていませんでした)。
「〈三破風館〉」のように、ずっと家にいるのは可能なのかとふと考えました。COVID-19 対策として、私はなるべく人に会わないようにしています。フリーランスとして家で働くので基本的に家にいるものの、完全に籠もるのは無理です。子どもの保育園への送り迎えや買い物でどうしても外出が必要です。私が外出しなくても、家族が仕事に行ったり食料を買いに行ったりします。作品中のずっと家に籠もっているおじさんは、自宅で食料を栽培しているんでしょうか。Amazon も Uber Eats もないホームズの時代に、「ずっと家にいる」なんて無理な気がします・・・。こんな感じで現代に置き換えるとホームズ物語が、自分事として読めて面白いです。
‘The Retired Colourman’(隠退した絵の具屋)ではホームズとワトスンが電話で話すシーンがあります。電話がほとんど聞き取れなくて、ワトスンが何度も “What?” と聞いているところがちょっとかわいそうです。そのわりに最後に「ありがとう、ではまた!」だけは力強く言っているところがかわいいです。
ホームズ物語全体に言えることですが、どんな悲惨な事件でも、あるいは当事者からしたら悲劇であったとしても、面白おかしい明るさがあるところがいいですね。基本的に読んだあと楽しかったという爽快感があります。
毎回 10 回繰り返し集中的に聴いているせいかもしれませんが、オーディオブックで聴くような、本で読むのとは別スタイルでの読書は新しい気付きが多くあります。