ポケットの中にホームズ全集を

年末年始のプロジェクトとして蔵書の電子化をしました。本を裁断しスキャンする、いわゆる「自炊」というものです。

読書好きとして、電子書籍にはない紙の本の素晴らしさは十分理解しています。でも、紙の本の持つ数々のメリット以上に、僕にとって物として本を持つことに負担を感じるようになったため、自炊を決意しました。以前も自炊をしたことはありますが、そのときは代行業者を利用しました。でも今回は自分で作業をしました。

作業を開始した当初は、特別な思い入れのある本だけは紙の本のまま持っておくつもりでした。そのなかにもちろんホームズ関連の書籍も含まれています。特に正典だけはずらりと本棚に並べてニヤリとするためにも残しておきたい。

しかし、その他の本を散々裁断、スキャンしているうちに、「ホームズ本も自炊すればいいや」と思うようになりました。作業に疲れてうんざりして、自暴自棄になっていたことも関係しています。

ついにホームズ本にまで刃物(カッター)をむけるようになったのです!

『「捨てる!」技術』(辰巳 渚、宝島社、2000:p80)にも「 “聖域” を作ってはいけない」と書いてあります。「これだけは残しておこう」などと考えず、捨てるべきだということです。ホームズだって「例外を認めてはいけない」といったことを何度も言っています。

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実は過去に蔵書の自炊をしたときにホームズ本の自炊をしており、新潮文庫、ちくま文庫の全集は電子化済みでした。ジャック・トレイシーやマシュー・バンソンのホームズ事典もです。それらを iPad でいつでも読める状態にしていたのです。いつでもどこでもホームズ全集が参照できるのは便利です。まさに「ポケットの中にホームズ全集が入っている」状態です。iPad はポケットに入りませんが。それをその他のレーベルの全集においても実現しようというわけです。

創元推理文庫、河出書房新社の単行本、原書、河出文庫(一部)、光文社文庫(一部)、角川文庫(一部)のホームズ全集をせっせと自炊しました。もちろんホームズ関係のその他の本も自炊しました。

『〈ホームズ〉から〈シャーロック〉へ』は 500 ページ弱の本で製本が特殊で裁断が大変でした。

河出書房新社の単行本は後注で、注が本の後ろのまとめてあります。あちこち注を参照しながら読書するのが電子化したら難しくなるので、電子化しないつもりでした。でも自炊しました。アプリによっては離れた2つのページを同時表示することもできますし、iPad を2台、あるいは iPad とパソコンを並べて同じ PDF の別ページを参照しながら読書できます。むしろ紙の本で読んでいたときよりも読みやすそうです。

そして “ラスボス” が、レスリー・クリンガーさんの詳注版全集です。あの本は苦労して新品を買い集めました。中の挿絵の印刷が他の全集と違ってとても綺麗です。3冊並べたらホームズの顔になる背表紙も紙の本で本棚に置いておきたい・・・・でも自炊しました。「クリンガーさん、ごめんなさい」と心の中で唱えながら裁断しました。頑丈な箱はカッターでは解体できず、のこぎりを使いました。自炊のことを屠畜(とちく)に例える人の気持ちが分かりました。

参考:

クリンガー全集は買ったもののたまに開くだけの、”coffee table book”(応接間などに置いて、読んでいないのに教養人だと自慢するための本)と化していました。大きく重たい、読む場所を選ぶ “迷惑な本” でした。電子化することで今後は気軽に参照できるようになりました。近いうちに精読をしたいと考えていたのでちょうどいいです。

まだ一部しか揃えていない光文社文庫と角川文庫の全集は今後は電子書籍版で集めると思います(もううんざりする自炊作業をしたくないので)。

自炊した PDF は OCR をかけて検索可能にし、全文検索ができるようにします。これで該当箇所を一発で見つけられるわけです。さらに自宅に検索システムのサーバーを立てて、外出先からでもアクセスできるようにすれば完璧です。自炊作業の疲れが取れたころに取り組むつもりです。

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